はじめに
DX(デジタルトランスフォーメーション)推進が企業の重要課題とされて久しい中、なぜか業務現場の多くでは、いまだにFAXによるやりとりが当たり前のように残っています。営業、調達、総務、そして経理──そのどこでも、請求書、注文書、納品書、見積書といった文書が「FAXで送ってください」と日常的にやり取りされています。本記事では、なぜ日本企業の現場からFAXが消えないのか、その背景を紐解きつつ、今すぐ始められる現実的な変革方法をご提案します。

1. DXの進行と”FAX文化”のギャップ
企業のデジタル化が急速に進む中で、多くの業務部門はすでにクラウドツールの導入を完了させ、業務効率を高めています。営業部門はSFA、マーケティング部門はMA、採用はATSといったように、各領域に特化したデジタルソリューションの導入が当たり前の光景になっています。
しかしその一方で、注文書・納品書・見積書・請求書など、業務の根幹に関わる文書のやりとりでは、FAXによる送受信が依然として主流となっている現実があります。2024年現在でも「FAXで注文書を受け取り、紙で保管」「印刷して押印のために出社」といったアナログなプロセスが日常的に繰り返されているのです。
特に中小企業では、取引先や仕入先の要望・ルールによってFAXを使わざるを得ない場面が多く存在し、クラウド活用の推進が現場の運用と乖離する大きな要因となっています。業務フローの一部にFAXが組み込まれていることで、他の部分をどれだけデジタル化しても、“最後の紙の壁”が残ってしまうのです。
2. なぜFAXは今も使われ続けるのか?
多くの業務がデジタル化されているにもかかわらず、FAXだけは頑なに使い続けられている――この現象には、単なる慣習以上の背景があります。法令や取引先との慣習、現場特有の運用ルールなど、FAXが現場に残り続けるには理由があります。
また、FAXは「レガシーな手段」として語られがちですが、ある意味で“便利で安全”という認識をされているケースも多く、それがデジタル移行を妨げる一因となっています。
以下では、FAXが使われ続ける主な理由を3つの観点から掘り下げていきます。
(1) 法令対応に対する過剰な慎重さ
電子帳簿保存法やインボイス制度では、電子取引で受領した請求書や領収書は電子のまま保存することが義務付けられています。
しかし、現場では「制度対応=厳格な原本保管が必要」といった誤認や、過去の運用に引きずられる形でFAXや紙に依存し続けているケースもあります。
結果として、制度は電子化を後押しするはずが、実際の現場では“リスク回避”のため紙運用が続いてしまっているのが実情です。
(2) サプライチェーンの“紙前提”
得意先や仕入先とのやりとりがFAX前提で設計されているため、単純にメールやチャットに置き換えられない。
FAXは一度送れば相手のフローに即時組み込まれるため、ある種“楽”な手段とさえ思われている。
(3) 属人的ノウハウと現場ルール
実際の帳票処理はベテランの“暗黙知”で回っており、マニュアル化・標準化が遅れている。
DX推進の旗を振る情報システム部門と、各現場担当者のギャップが埋まらない。
3. 解決策:「紙 vs クラウド」ではなく「文化 vs 現実」で考える
(1) “紙”を否定せず、クラウドとつなぐ
日本企業に根付くFAX文化は、単なる慣習ではなく、業務プロセス全体に深く組み込まれています。得意先との信頼関係や、誤送信リスクの低さ、紙で残る安心感など、合理性があって残っている面もあります。
そのため、無理に「脱FAX」を目指すのではなく、FAXの送り手・受け手のどちらか一方でもクラウド化することで、紙のやりとりを段階的に減らすのが現実的なアプローチです。
例えば、紙で受信する必要がある場合でも、送信はPCから行うことで「印刷・手書き・押印・紙送り」の手間を削減できます。
(2) 現場部門から始める小さなDX
DXはシステム刷新ではなく、現場の“面倒”を1つずつ解消することから始まります。FAX送信・受信という特定の業務に絞ってクラウドFAXを導入することで、作業効率や人的ミスを大幅に軽減できます。
クラウドFAXは、IT部門を巻き込まずに現場主導で導入できるツールが多く、導入障壁が低いのが特長です。特に、営業部や調達部門など「FAXに触れる頻度が高い部門」こそ、自発的に小さな変化を起こせます。
一度FAX業務がクラウド化されれば、それに合わせて周辺の業務フロー(保管・共有・承認など)も見直され、自然に業務全体のデジタル化が促進されていきます。
4. クラウドFAXという選択肢
導入のしやすさ
クラウドFAXの多くはPCとメールアドレスさえあれば利用でき、専用のFAX機や電話回線は不要です。初期設定も数分~数時間で完了し、特別なIT知識がなくても現場で即日運用を開始できます。
法令対応
電子帳簿保存法に対応しており、送受信したFAXデータをPDFなどの形式で保存し、そのまま会計・経理処理にも利用できます。インボイス制度に対応した帳票管理もスムーズに行えるため、法令順守を実現しつつ、紙の保管コストも削減できます。
セキュリティ
送受信データは通信経路が暗号化され、アクセスログも自動的に記録されるため、不正アクセスや情報漏えいのリスクを最小限に抑えることが可能です。送信ミスを防ぐためのプレビュー確認や二段階認証など、機能面でも充実しています。
コスト削減
FAX機器の維持費、トナーや用紙代、印刷・押印・郵送の手間、さらには紙書類の保管コストといった、アナログ業務にまつわるあらゆるコストを削減できます。月額課金モデルが主流で、使った分だけの従量課金プランもあるため、導入ハードルが非常に低いのも特徴です。
5. 今すぐ始めるためのステップ
1. 自社のFAX使用状況を可視化する
まずは、自社でどのくらいFAXを使用しているかを把握することから始めましょう。送信・受信件数、頻度、相手先(得意先や仕入先)を洗い出すことで、業務全体のどこにFAXが集中しているのかが見えてきます。部門別に分類しておくと、クラウドFAXの導入効果が高い箇所を優先的に検討できます。
2. クラウドFAXの無料トライアルを活用する
多くのクラウドFAXサービスには無料トライアルが用意されています。これを活用して、実際の運用フローにどれほどフィットするかを現場レベルで検証しましょう。可能であれば実際の帳票を使いながら、送信・受信・保存までを通しで体験し、使いやすさや改善点を洗い出します。
3. 得意先・仕入先への通知準備
FAXをクラウド化しても、相手側が従来通りのFAX機を使用している場合も多いため、変更の旨を周知することが重要です。社外宛てに使える切り替え案内テンプレート(例:「今後はクラウドFAXから送信されますが、従来通り紙で受信できます」など)を用意し、スムーズな移行をサポートしましょう。
4. 帳票保存・連携のワークフローを見直す
FAXをクラウド化することで、PDF化された文書が自動保存されるようになります。これに合わせて、受信後の保管方法、共有ルール、承認フローを見直すと、さらなる業務効率化につながります。ファイル名ルールの統一や、クラウドストレージとの連携、自動仕分けなども併せて検討すると効果的です。
6. TransFaxという選択肢
- メールやSFTP、API(SOAP)を使った柔軟な送受信に対応しており、既存の業務フローに無理なく組み込めます。
- 既存FAX番号を利用可(転送、移転)、新規のFAX専用番号も提供可
- FINEモードやリトライ送信、送信状況の可視化といった独自機能により、実務でのFAX品質や安心感を確保。
- アクセス制御、暗号化通信、課金コード対応など、セキュリティ・管理機能も充実しています。
- さらに、電子帳簿保存法に準拠したPDF保存やFAX受信時のTIFF対応など、法令対応や長期保存にも適しています。
クラウドでFAXを管理するだけでなく、「FAX業務をきちんと仕組みに落とし込みたい」「現場とシステムの接続点を整えたい」という企業にとって、TransFaxは最適な選択肢となるはずです。
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おわりに
“DXが遅れている”と責めるより、現場の現実に寄り添いながら一歩を踏み出すこと。それが、本当の意味でのデジタル変革です。FAX文化に悩む各部門の担当者こそ、変革の主役になれる──その一歩目として、クラウドFAXの導入を検討してみませんか?